正月の曾我の里で、大きな砥石<といし>で矢の根を磨いていた曾我五郎の初夢に、兄十郎の生霊<いきりょう>が現れ、いま敵の館に捕らえられていると告げて助けを求める。驚いた五郎は四方の悪魔払いをした後、来合わせた裸馬に乗り、大根を鞭<むち>にして駆け出す。 大薩摩<おおざつま>の浄瑠璃<じょうるり>を語っていた太夫が山台<やまだい>を降り、扇を年玉にして年礼に来る演出や、五郎が七福神に悪態<あくたい>をつくなど、理屈抜きに洒落<しゃれ>た江戸の初春狂言。