入院日記が更新されました。先日の総選挙に関しての感想などなどです。
気の向くままに入院生活で身の周りに起こったこと、思ったことを書かせて頂いていますが、メールやお手紙でいろいろな御意見や、励ましを送っていただきありがたく存じております。一つ一つお答えしたいのですが、大変多くのお便りなので、失礼ながらこの書面にて御礼申し上げることお許し願います。
さて、テレビっ子になっていると、今回の選挙ほど、話題を集めたり、テレビでの取り上げ方が圧倒的に多いというのは珍しいことだが、良い事だと思う。
私は、選挙には必ず行っている。
仕事上やむを得ず棄権したことはあるが、間に合えば不在者投票も何度かしている。
子供達にも、「選挙は国民の義務と権利だから、一緒に行こう。」と誘い、近所の小学校の投票所に、散歩がてら歩いて行く。
若いと選挙に関心が薄いが、これから文句が言いたい事が出来た時、義務である投票をしていなければ文句は言えない。それに、お前達の将来にも関係しているのだ、と説いている。
今回の選挙でも、海老蔵から「投票に行きたいけど、どうしたらよいか。」と相談された。
海老蔵は、公示前に巡業の旅に出かけなければならない。公示前の不在者投票はあるのか、そのやり方がどうなのか答えられなかったので、やむを得ず投票せずに旅に出た。
病院で投票をする場合は、病院内の選挙委員の方が控えている部屋に行くか、病室まで来てくれる。今回の選挙は病院で投票を行った。去年7月の参議院選挙も、やはり病院であった。2年続けて病院での投票になるとは努々(ゆめゆめ)思わなかったが、これも仕方がない。
病院生活では有り余る時間が手に入る。お陰様で多くの本を読んだが、その中に歴史家ジョン・ダワー氏の『敗北を抱きしめて』という著書を読んだ。
この本は、「第二次世界大戦後の日本人」と副題がついていて、主に戦後の日本人の分析と、日本国憲法の成立の過程を多角的、かつ緻密に分析している。
役者は政(まつりごと)に口を出してはいけないと、私は教育されてきた。
これは、政治への賛否や意見を公にすることにより、偏りができるからである。
役者はご贔屓あってこその役者であるから、偏らずに少しでも多くの方に贔屓して貰わなければならない。また、あまり強い意見を主張すると、役の後ろに役者個人が出過ぎてしまうからだとも考える。舞台一途に精進して来た昔の役者さん達の立派な知恵だと思う。
しかし、これからの時代は、ある程度主張すべきは主張した方が良いと思う。
今回の選挙で自民党が圧勝したので、俄に憲法論議が高まった。
護憲か改憲か。
私は、去年『敗北を抱きしめて』を読んで考えさせられ、すぐに六法全書を買いに行き、薄弱な知識ながら現行憲法は日本人自身の手によって何らかの修正が必要であるとの考えに至った。
戦後間もなく、昭和20年秋から昭和21年3月にかけて、憲法研究会、共産党、自由党、進歩党、社会党の各党派、憲法懇談会をはじめとする民間団体や個人から、少なくとも12の憲法修正案が出された。
著名な人々が、天皇制など大きな問題に立ち向かい、大変な努力をしていたが、多国籍の極東委員会が、昭和21年2月の終りに活動を開始するとの情報を、2月1日に占領軍マッカーサー最高司令官は入手していたそうである。
マッカーサー司令官は、皇室の安泰が日本国民の安定と救済に繋がると、考えていたようだ。ところが、多国籍の極東委員会の国の中には天皇制に反対の国もある。
極東委員会に主導権を取られて混乱を招かない内に、早急に憲法の草案を出さなければならない必要性にマッカーサーは迫られた。
GHQの憲法制定会議がすぐに召集され、マッカーサーの命令により、1週間以内にすべてそろった一国の国家憲章の草案を作成することになった。
後の日本国憲法は、16人の軍人と、8人の民間人、計24人のアメリカ人が、第一生命ビルの6階の舞踏会場で1週間缶詰となり、異常な状態で起草されたそうである。
このような状態で起草された日本国憲法だが、わたしは立派な憲法だと思うし、起草した人々の努力と叡智に心から敬意を表する。
なぜなら、たとえ戦勝国の優位を保つところがあるとはいえ、この憲法の理念により日本は大いなる恩恵に与ったといえるからだ。
だが一国の民族、あるいは国民が自分達の最高の約束と理念に掲げる憲法が、いつまでも外国人の手によって起草され成立した侭でいるのはおかしいと思う。
憲法発布以来60年を迎えようとする今日、時代の流れも考慮しなければならない。
が、何よりも日本、あるいは、アジアの東の外れに位置する、日本列島という地域に住む我々が共栄共存し、争いのない平和と平等な社会を築くための約束と理念は、この土地の気候風土を熟知した人々の叡智によって築かれなければならないと思う。
いつまでも人の知恵で生活するのではなく、自分の知恵で自立し生活する大人にならなければならないのではあるまいか。