ホーム > 成田屋通信
成田屋通信
2005年09月20日
入院日記6

入院日記が更新されました。今回は、患者になってみて感じること、でしょうか。  朝6時に検温があり、体重測定のために病室を出て、ナースステーション前の廊下に置いてある体重計に乗りに行く。デジタル表示が目まぐるしく動き、最後はもったいぶってゆっくり行ったり来たり思わせ振りを見せて止まる。示された数字に、密かに一喜一憂して、目の前にある用紙に記入する。
 病室に戻る廊下の左右に並ぶ病室を、あまり目立たぬように気を遣いながら、そうーっと覗いてみると、血液内科病棟の患者さんは、起きているのか寝ているのか分からないが、皆さんはまだ静かにしておられた。
 前の病院では、体重を測る時は体重計を病室までナースさんが持って来てくれ、体温、血圧、脈拍を一緒に測ってくれたが、やはり病院によってポリシーやシステムが違うようである。
 体重をわざわざ歩かせて測りに行かせるのも、日頃運動不足になる患者に、少しでも運動をさせる配慮であろう。
 だが、抗がん剤投与の治療を受けている患者さんの中には、抗がん剤の副作用で、吐き気、ムカつき、各臓器の障害、口内炎、その他もろもろの症状に悩まされている方もいるだろう。そういう患者さんはもちろんそんな悠長ことは出来ない。
 自分の病室に戻る廊下の反対側に同じような廊下があるが、その前には窓ガラスが大きく向こう側の廊下がよく見え、入室に対する注意書きが貼ってあるドアがある。
 ドアの向こう側は骨髄移植を受ける、または受けた患者さん専用の一郭で、空調の設備が違い、空気を新鮮に保つと共に、気圧を少し高くし、外部からの細菌やカビの進入や増殖を防ぐことで、患者の安全を図っているそうである。
 まだその上に、ベッドの枕元に空気清浄機が置いてあり、さらに必要がある時はビニールカーテンで隔離される。
 まるで牢獄の中に入れられるように思う方もいるだろうが、私は去年の発病でカーテンの中に入ったが、昔のアメリカ映画で病院のシーンによく出てきた病室の風景に似ているような感じがして、ビニールの透き通った中にいると映画スターにでもなった気分になり、満更でもなかった。
 何故、そんなに神経質過ぎる位に感染症予防に細心の注意を払うのか。これは白血病の治療法と関係がある。
 しかし、その予防こそが最も大切であり重要であることは、この病気を患って治療を受けたものとして、身に沁みて感じている。
 血液の病気である白血病は、染色体の異常によって起こり、その組み合わせや、リンパ、赤血球、白血球、血小板に変化するもとになる骨髄液中の幹細胞の成長過程の、どの辺で異常があったかによって型が決まる。私の型は、急性前骨髄球性白血病、別の言い方をすれば、急性骨髄性白血病(M3)型となる。
 勿論白血病の治療法はいろいろあるだろうし、私などが「そもそも白血病は、その治療法は」なぞと、生兵法のうんちくを述べれば「医師法違反だ」とお叱りを受けるかもしれないが、私なりの解釈を披露する。
 白血病の治療法は、化学療法が基本である。化学療法とは、抗がん剤などを点滴で投与して、病気の改善を図る。従って、外科的療法と違って劇的改善は望めないため、どうしても長時間の療養が必要になってしまう。
 では、その治療はどんな事をするかといえば、私が思うには、抗がん剤を洗剤に例えれば「骨の中の骨髄を多量の洗剤で洗濯する治療」簡単に云えばそういう治療と言えるだろう。