團十郎より新年のご挨拶の第二弾です。
今年は、歌舞伎発祥四百年という、記念すべき年です。その年の初めに『助六由縁江戸桜』の助六を勤められること、まさに役者冥利につきることと思っております。今回の助六では、風邪を引くまいと、昨年の11月末にインフルエンザの予防注射を久しぶりにいたしました。是非この正月公演では、初春らしい助六を勤め上げたい、と思っております。
今年はもう一つ大変なことがあります。それは、新之助がNHKの大河ドラマ『武蔵』に主役として出して頂くことです。
1月5日から放送され、お蔭様でどうやら順調なスタートがきれたようで、胸を撫で下ろしております。ただ、舞台の生活と撮影の生活は全く違う上に、『武蔵』の撮影はロケが多いので、最近めったに会うことはありません。この冬は、気象庁の発表では初め暖冬でしたが、いつの間にか平年並みとなり、けっこう雪も降り、寒い思いをしているようです。1年間の長丁場ですから、健康に気を付けて頑張ってもらいたいと思っています。
メールの中で『勧進帳』「助六」親子共演のDVDを出して欲しいとの要望が何件かありましたのでお答えいたします。
実は、舞台をテレビで中継したり、ビデオやDVDで発表したり、発売するのは大変なことなのです。
というのは、肖像権、著作権、著作隣接権という知的所有権が近年、確立されつつあるからです。
例えば、一人の役者さんだけで踊る舞踊ならば、ビデオ、DVDにすることは難しくはありませんが、大勢の人々が参加している芝居となると、一人一人の許可を得なければなりません。
それでも、大きな企業や組織でその繁多な手続きをまとめて行い、発売することは可能なことです。ただ、個人単位で制作するのは、問題が多くあり大変難しいことなのです。
ですが、芝居の内容や演出方法によっては全く不可能なことではないので、心のどこかにしまっておきたいとおもいます。 市川團十郎